大晦日、検索しみつけた論文、Randomised Trial of Adjuvant Radiotherapy Following Radical Prostatectomy Versus Radical Prostatectomy Alone in Prostate Cancer Patients With Positive Margins or Extracapsular Extensionのfull text(PDF)を正月明けに解読し、サイトに概要を紹介しました。
http://flot.blue.coocan.jp/cure/memo/Hackman.html
患者はpT2N0M0で断端陽性またはpT3aN0M0(断端陽性または断端陰性)であり、アジュバント放射線療法群と観察群に分けられたランダム化比較試験の結果を報告したものです。ランダム化比較試験はひげの父さんが2013年12月 2日の投稿で書かれているようにエビデンス レベルの高いものです。
10PSA非再発率
アジュバント群:82%
観察群:61%
ということで、明らかに統計的に有意な差があります。これまでのRCTでは主にpT3-4前立腺がん(断端陽性または陰性)に焦点が当てられていましたが今回はもう少し低い症状に対するものということのようです。
断端陽性は必ずしも将来のPSA再発を来すことをいみするのではない(ただし大きなリスク因子ですが)ということを2018年 6月23日の投稿で示しました。
その後、初心者さんとの掲示板でのやりとりがありました。
https://sen-you.boy.jp/bbs/main/?res=10246
https://sen-you.boy.jp/bbs/main/?res=10247
「adjuvant radiotherapy (ART)は手術後、特にPSA非再発をまたずに外照射を行うもの」ということを10246 で引用紹介してています。今回のRCTも「前立腺がんの手術から12週間以上経過している場合は除外」ということで概ね3カ月以内での外照射ということでしょう。
多分に初心者さんは私の参照する論文を明示する投稿を煩わしく思われたのでしょう。
今回のヘルシンキ大学のGreetta Hackman氏を筆頭著者とする論文で着目したのは観察群でサルベージ放射線療法を受けたがその結果は思わしくなかったということです。full text の結論には次のように書かれています。
注目すべきことに、転移性疾患およびCRPCのより多くの症例が観察(「サルベージ」)アームで発生し、高リスク患者に根治的前立腺切除後の補助放射線療法を検討する可能性を提供すべきであると示唆した。
PSA再発時に早期にサルベージ放射線治療を受ければいいのではという考えもあるかと思いますが、このRCTの対象となった患者においては必ずしもそういった結果にはならなかった(アジュバント群と同じ)のは多分に経過観察している間にがんが進展しそのことが後の転移性疾患およびCRPCにつながったのではないかと思われます。もちろん、このことは論文には書かれてなくて素人の私の推測です。