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α線内用療法
投稿者:山川 投稿日:2018/03/24(土) 21:30:43 No.9855 [返信]
3月19-21日と大阪大学中之島センターで“放射線生物効果国際ワークショップInternational Workshop on the Biological Effects of Radiation-副題 放射線生物学と放射線医学利用の橋渡し”が開かれました。 将来放射線のお世話になるかもしれないので、放射線治療の現状を知っておこうと思って参加してきました。以下印象に残ったことと感想です。

1)大阪大学での標的α線療法(targeted alpha therapy)研究
α線放出核種であるAt-211(アスタチン-211)をがん細胞を標的とする抗体に結合させた
放射性薬品の開発研究が進行中。サイクロトロンで製造したAt-211でがん細胞に結合する抗体を標識したものを使った動物実験を間もなく開始する計画だそうです。
2)放射線治療後の二次がん
キュリー研究所Cosset博士の話によると、放射線治療の後にがんが発生することは確かだが、放射線治療そのものによるものはまれで、全体の8-9%程度であるそうです。(感想)最近のIMRTや小線源治療などでは、がんに無関係な場所の被ばくは非常に少なくなっているので無視してよいのでは。
3)放射性医薬品を使った治療での放射線防護
近大医学部細野先生のお話: “放射性医薬品を使った治療(RNT)では、放射性物質が直接患者の体内に入るので、がんに無関係な組織への被ばくを少なくすることが大切である。
セラノスティクス(診断治療同時法)は診断と治療を同時に行う方法で、例えばI-131を使った甲状腺がんの治療や、インジウム-111結合抗体とイットリウム‐90結合抗体を使ったB細胞ホジキンリンパ腫の治療がある。Lu-177(ルテニウム-177)結合抗体を使用した内用療法は主にヨーロッパで行われている。また、アルファ線放出核種であるAc-225標識PSMA抗体では前立腺進行がんで劇的な治療効果が得られている。 ユーラトムの安全基準(Council directive 2013/59 Euratom)では放射線線量に基づいた治療計画が求められている。セラノティクスでは、患者それぞれの状態に対応したオーダーメイドの治療計画が出来るようになったので治療効果もさらに良くなるだろう。“

(感想)

細野先生の話の中にあったAc-225についての論文
Kratochwil,C.,et al., Targeted alphaTherapy of mCRPC with (225)Actimium-PSMA-617:Swimmer-Plot analysis suggests efficacy regarding duration o ftumor-control. J.Nucl Med,2018
の無料アブストラクトを読んでみました。225Acを使ったアルファ線治療については、2016年に
角さんのブログで紹介されていたので、興味を持っていましたが、ハイデルベルク大学のKratochwil博士たちは、カールスルーエの大型加速器を使って作られた225Acを使って、本格的な治験をしているようです。2016年の初報論文では、二人の患者さんについての劇的な骨転移がんの消滅が報告されていましたが、その後、慎重に線量評価などしながら、治験効果のデータを蓄積されているようで、患者の一人として大いに元気付けられる論文ですが、日本で225Acを製造できるようになるかどうかはわかりませんので、まずは現在進行中のAt-211に期待です。

以下勝手訳です。
方法
 40人のホルモン耐性転移前立腺がん患者を選び、2ヶ月間隔で体重1kgあたり100kBqの225Ac-PSMA-617を3回投与した。4週ごとにPSAと血球数の検査をした。前立腺特異細胞膜抗原(PSMA prostate specific membrane antigen)を対象としたPET/CT撮影または SPECT/CT撮影を行い治療前と治療後(6ヶ月目)の状態を較べた。 経過観察にはPSA反応と6ヶ月後の核医学的に見て進行なしの生存が含まれる。 患者暦は、以前の治療ラインについて調べた。ついで、スイマープロット法を用い、がん制御期間を、PSMA治療法と前治療法との間で較べた。
結果
40人の治療対象者のうち5人は、本治療法に無反応であったため、4人は口腔乾燥症のため治療を途中で取りやめた。少なくとも8週間生存した患者のうち、38人中24人(63%)で50%を超えるPSA値の減少が観察された。また、33人(87%)の患者で何らかのPSA値減少が観察された。
最終治療後の平均がん制御期間(duration of tumor-control)は9ヶ月であった。5人の患者は2年を超えて頑張った(presented with enduring responses)。 すべての患者が非常に進行した状態であったから、本結果は、もっと早期の状態での制がんに相当する。
結論
225-アクチニウム-PSMA-617はすばらしい抗がん作用を持つ。スイマープロット分析の結果によれば、選ばれた患者の状態を考えると、制がん状態の延長がおおいに期待できる。口腔乾燥症が治療中断と投与拒否の主な理由である。本治療への反応なしも同次元の問題である。 副作用に関する治療方法の改善が治療範囲をひろげるには必要である。

                                          おわり
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