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転移癌の治療
投稿者:漂流 投稿日:2017/10/06(金) 21:59:06 No.9347 [返信]
現在の転移癌の治療には、抗がん剤が頻繁に用いられます。抗がん剤の作用は、細胞分裂が盛んなところ、つまり癌組織/細胞に作用して、細胞分裂を阻害し、細胞を死滅させることです。しかし、同様に盛んな細胞分裂で機能を維持している場所、免疫を担当する細胞/消化管の細胞/毛根の細胞にも作用します。その結果、副作用として、感染症、下痢を起こしやすくなり、そして頭髪が抜けることもあります。

前にも記載しましたが、原発癌と違って、転移の過程で、遺伝子変異 そして、発現変異がある意味「無秩序」に起こりますので、個々の転移癌 そして 患者個人によっても、抗がん剤の作用/副作用の強さが異なります。従って、治療プロトコルの個人差が大きくなります。

最近、新たな治療法が開発されました。それは、抗体を用いたドラッグデリバリーシステム(抗体医薬)です。先ず、癌細胞の表面に存在し、それ以外の細胞の表面には存在しないか、あるいは、あってもきわめて少ない、蛋白質に対する抗体を作製します。その抗体に「刺客」物質を化学結合させ、体内に導入します。すると、抗体が癌細胞にくっつき、「刺客」物質が活動して癌細胞を死滅させます。
 現在、HER2陽性の進行・再発乳癌の治療に抗体医薬が使われ始めています。この抗体医薬は、HER2のモノクローナル抗体であるトラスツズマブと細胞毒性物質エムタンシン(DM1:超強力)が結合したトラスツズマブ エムタンシン(Trastuzumab emtansine、米国ではAdo-trastuzumab emtansine)です。

最近、前立腺癌の転移癌でも、こうした抗体医薬を使った治療が始まりかけていますので、以下に簡単に紹介します。
 前立腺癌の場合、非常に好都合なのは、「前立腺がんの骨転移の検査」の項にも書きましたが、PSMAいう蛋白質が、前立腺/前立腺癌細胞の表面に大量にあります。そのほかの場所としては、唾液腺、涙腺にもありますが、量は僅かです。このPSMAに対する抗体を作って、その抗体に「刺客」物質をつけたものです。この物質はアルファ崩壊(ヘリウム原子核を放出)する放射性同位元素アクチニウム(原子量225; 半減期10日)です。ヘリウム原子核は短距離しか飛びません(紙一枚で遮蔽可)が、そのエネルギーは絶大で、細胞を確実に死滅させます。

この抗体医薬(225Ac-PSMA-617)を使った、前立腺がんの転移癌の治療成績を示した論文が、今月公表されました(THE JOURNAL OF NUCLEAR MEDICINE • Vol. 58 • No. 10 • October 2017)。
 図のAは「前立腺がんの骨転移の検査」に記載した方法で調べた転移癌の状態 図のBは、225Ac-PSMA-617で治療後、転移癌の状態を調べたもの。 転移癌が消滅しているのが分かります。副作用としては、唾液腺、涙腺もある程度損傷を受け、ドライマウス、ドライアイになることだと書いてありました。

今後は、この治療法がどの程度有効かを検証していく必要があると思います。また、近いうちに、日本でも利用可能になればと思います。

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