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滋賀医科大学の治療成績について
投稿者:SANZOKU 投稿日:2017/03/17(金) 12:06:46 No.56

滋賀医科大学の治療成績について

<論文の概要>
 この論文は滋賀医科大学の岡本、河野先生のグループで治療された2005年から2013年までの高リスク患者143名の治療成績についてまとめられたものです。2005年は先生が治療を開始された時期にあたります。5年非再発率が95.2%と高リスク患者を対象とした結果では他にない好成績です。高リスクと言ってもリスク要因が1つの患者が60名(42%)、2つが61名(43%)、3つが22名(15%)と並外れた高リスクであり(詳細はTable1&2)、しかも前立腺近傍のリンパ節転移1~2個を有する患者5名を含んでいます。
 この内不幸にして再発された患者さんは6名になります。この6名の方は全員、外部照射終了から12―30ヶ月でPSA再発をきたし、その後0―18ヶ月で骨転移を確認しています。つまり全員5年以内に骨転移による臨床再発をきたした訳です。特筆すべきは、リンパ節転移を有した患者さんが再発していないことです。そして前立腺癌による死亡が1名あり、他の原因で死亡した患者さんが3名いました。

 それではこのような好成績を収めた治療法について説明します。先ず、全ての患者さんがホルモン治療、小線源、外部照射を併用するトリモダリティを受けています。ホルモン治療はLH-RHアゴニストと抗男性ホルモン剤を併用するMAB療法です。そして原則として小線源前6ヶ月のネオアジュバントと、その後は6ヶ月のアジュバントを行っています。小線源治療は経直腸超音波エコーを用い、125I線源をリアルタイム術中計画法で前立腺に留置します。また癌の位置によっては精嚢にも留置します。処方線量は通常D90にて135~145Gy程度になります。D90とは前立腺体積の90%に照射される最低線量で、これはBED(生物学的実効線量)に換算すると141~153Gyになります。小線源と合わせた総線量をBEDで220Gy以上確保するため、小線源施術1ヶ月後のポストプランで外部照射の処方を決めます。外部照射は3次元原体照射にて行います。その線量は1回1.8Gy、総線量は45Gyを中央値としています。そして前立腺と精嚢辺縁に15mmのマージンをとって照射します。ただし他臓器近辺は7~10mmにします。リンパ節転移を有する患者ならびに非常にリスクの高い患者は、それ以外にも骨盤内全般の照射も行います。これら全ての照射はUD30ならびにR100を担保します。
実際に患者さんに施された線量はTable3、Table4にまとめられています。
 *UD30(Gy) : 尿道線量の指標で尿道体積の30%が受ける線量
   小線源単独療法:200Gy未満 (術後210Gyを超えないように)
   外部照射併用療法:160Gy未満 (術後165Gyを超えないように)
 *Rectal V100(cc):直腸線量の指標で処方線量の100%以上が照射され
   ている直腸体積
    小線源単独療法:0.5cc未満
    外部照射併用療法:0.2cc未満

 いくら好成績であったとしても、有害事象が多ければ元も子もありません。論文ではグレード2の急性障害が直腸に1.3%、泌尿生殖器に10.4%あったそうです。またグレード2の晩期障害はそれぞれ2.0%と4.1%です。それ以上のグレードの有害事象はありません。治療としては末期の腎臓障害による血球減少にともなうグレード2の直腸出血をきたした患者1名が高圧酸素療法を受けました。また直腸出血はなかったが、特発性血小板欠乏症の患者1名が血小板輸血を受けました。尿道狭窄、経尿道切除術、直腸尿道瘻はありませんでした。
 *有害事象のグレード
   Grade 1 軽症 症状がないまたは軽度の症状がある。臨床所見または検査所見のみ。治療を要さない。
   Grade 2中等症 最小限局所的非侵襲的治療を要する。年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限。
   Grade 3 重症または医学的に重大であるが、ただちに生命を脅かすものではない。
    入院または入院期間の延長を要する。活動不能、動作不能。身の回りの日常生活動作の制限。
   Grade 4 生命を脅かす 緊急処置を要する。
   Grade 5 有害事象による死亡

 その他私が気になったところを補足します。まずFig1と2の説明です。Fig1はA.PSA非再発率、B.臨床非再発率、C.前立腺癌生存率、D.全生存率です。勘の鋭い方は、PSA非再発率>臨床非再発率の関係に疑問を抱かれると思います。これはPSA再発率<臨床再発率を意味しているからです。論文を読めば分かることですが、実際はPSA再発率=臨床再発率なのですが、統計処理に用いられているカプランマイヤー法ではこのような奇妙な結果になるのです。簡単に説明すると、カプランマイヤー法では年数を経るにつれて、母数が減少するので1イベントの重みが大きくなるのです。臨床再発はPSA再発の後に生じるので、1イベントの比重が大きくなる訳です。あくまで統計処理なので、このような曖昧さが介在することに注意しなければなりません。
 次にFig2は、精嚢浸潤とリンパ節転移を有する患者さんの患部の画像とその患者の治療後のPSA経過です。画像は専門家でないとよく分かりませんが、治療後の経過は極めて順調ですね。
 論文で特に興味を持った点は、必ずしも転移がリスク要因の数と関係していない点です。再発患者6名の内、4名が1リスク(4/60=6.7%)、1名が2リスク(1/61=1.6%)、1名が3リスク(1/22=4.5%)です。患者数が少ないのでこれだけで結論できませんが興味深い結果です。転移はリスク要因とは別の要素を原因としているかもしれないと暗示しているからです。

 私の解説ですので、間違いや勘違い独断があると思います。これを読んでご興味を持たれた方は是非とも原論文を読んで確かめてください。
https://www.termedia.pl/High-biologically-effective-dose-radiation-therapy-using-brachytherapy-in-combination-with-external-beam-radiotherapy-for-high-risk-prostate-cancer,54,29511,1,1.html
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